寒い朝、けんしと歩くゆっくりな時間

冬の朝の光の中を、老犬けんしが穏やかに歩く姿

夏のあいだは、朝の散歩が日課でした。
暑くなる前の時間を選んで、涼しいうちに歩く。
帰ったらお薬を飲んで、ごはんを食べて、また少し眠る。
そんな毎日を続けてきました。

最近は、朝がぐっと冷えるようになってきて
できればごはんのあとに、少し休んでからか
昼間の暖かい時間に行けたらいいなと思います。
それでも、けんしは体調がいい日は「行こう」と目で合図します。
散歩はあまり好きではないはずなのに、不思議です。

寒い朝は、もこもこの散歩用の服を着せて出かけます。
人のいない道をゆっくり歩きながら
「寒いね」「虫が鳴いてるね」と話しかける。
その何気ない時間が、今はとても愛おしいです。

近くを車が通っても、けんしは気にせず道の真ん中を、ゆっくり歩きます。
私はあわてて抱き上げようとするけれど
どの車も止まって、静かにゆっくりと通り過ぎてくれます。
そのたびに胸の奥があたたかくなって、「ありがとう」とつぶやきます。

もう走ることも、階段を登ることもなくなったけれど
歩くスピードがゆっくりになるほどに
一緒にいる時間の尊さを感じます。
小さな足音と、白い息。
そのすべてが、今日の幸せです。