けんしと始める、新しい朝|老犬と生きる時間のはじまり

けんしは、13歳のポメラニアン。
心臓病・肝臓病・甲状腺異常があり、いまは5種類の薬を飲んでいます。
その日の状態によって、それ以外の薬が増えることもあります。
ここ数年は膵炎を何度か併発し、二度の入院も経験しました。
けんしが眠っている姿を見ながら、何度も「もう少し元気でいて」と願った時間がありました。
私はこれまで、何匹かの犬や猫などと、いくつもの時間を共に過ごしてきました。
若くして空へ帰った子もいれば、19歳まで生きた子もいます。
先代のポメラニアンは14歳で旅立ちました。
けんしの年齢や病気のこと、そしてこれまでの経験から、
一緒に過ごせる日々は、そう多くはないかもしれない。
そう思ったとき、この時間を形に残したいと強く感じました。
家族の喧嘩などで、怖い思いや心配をかけてきた分、
残りの犬生は、ただ穏やかで静かに過ごしてほしい。
そう願いながら、けんしのそばにいる日々です。
今は、彼を抱っこしてベランダに出て、外を眺める時間がいちばん幸せ。
やわらかな風が毛の間を抜けていくと、けんしは目を細めます。
遠くの音や匂いを感じながら、しばらく動かない。
その横顔を見ている時間が、私にとっても心がほどける瞬間です。
動物病院はいくつか変えて、いまようやく信頼できる先生に出会いました。
けんしの体を丁寧に見てくれて、私の不安にも耳を傾けてくれる。
小さなことだけど、その安心感が、毎日の支えになっています。
老犬と暮らす中で、何度も思ったことがあります。
「仲間がいたらいいな」「同じように頑張っている人と話せたら」。
でも現実には、話せる相手がすぐ近くにいるとは限りません。
だからこそ、けんしとの日々をここに綴ることにしました。
最近、知り合いが大切なワンコを見送った話をしてくれました。
その人の言葉を聞く時間が、私には大きな救いになりました。
誰かの経験を通して、心が少し軽くなる。
その感覚を、今度は自分が渡せたらいいなと思います。
けんしは今、穏やかで安定しています。
食欲も旺盛で、見た目はまるで子どものよう。
柔らかい毛並みを撫でながら「今日もありがとう」と声をかけると、
ゆっくりと尻尾を振ってくれるそのしぐさが、何よりの答えです。
このサイトを作ったのは、けんしとの時間を記録するためだけではありません。
老犬を介護する人、病気の子を見守る人、
そして「いのち」と向き合う誰かの心に、
静かに寄り添える場所を作りたいと思いました。
ここに綴ることが、誰かにとっての小さな灯りになりますように。
そして私自身も、けんしと共に生きる日々から、
「生きる」ということを、もう一度学んでいけたらと思います。
