老犬介護の始め方|無理せず、今日できる準備から

正直に言うと、どこからが「介護の始まり」だったのか、
今もはっきりとはわかりません。
熱い日に床で寝てしまうとき、頭の後ろにまくらを置くようになったり、
段差をなくすためにブロックを置いたり、
散歩の途中で、急な階段を避けるようになったり
気がつけば、少しずつそういう手助けが増えていました。
もともと、散歩があまり好きではない子でした。
でも、年齢を重ねるうちに、ますます歩かなくなっていった。
当時の私は、それをわがままだと思い
リードを引っ張って、無理に歩かせようとしたこともあります。
けれどあとになって、それが
心臓の病気の悪化によるものだと知りました。
歩きたくなかったのは、苦しかったから。
そのことに気づいたとき、胸の奥が少し痛みました。
今は薬と食事のおかげで、数値も改善し、
むしろ歩きすぎて、途中で抱っこするほどになりました。
あの頃の自分に、
「もっと早く気づいてあげて」と言いたくなることもあります。
でも、たぶん介護って、
そういう失敗や後悔を通して、少しずつ深まっていく時間なんだと思います。
ある日突然始まるものでもなくて、
日常の中で、気づきを重ねながら進んでいくもの。
まずは、けんしが落ち着ける場所を見直しました。
滑らないマットを敷く、寝床の段差をなくす、
温度は人間が少し寒いくらい。
それだけでも、安心して眠る時間が増えました。
そして、飼い主の心の準備も同じくらい大切です。
できない日があっても、焦らない。
「今日も一緒にいられる時間」を感じるだけでいい。
介護は、戦いではなくて、
穏やかに、いのちと生きるための時間。
無理せず、少しずつ整えていけば、それで充分です。
これからこの場所では、
老犬と暮らす日々の中で見つけた、
介護の工夫や、心の整え方を少しずつ綴っていきます。

